新潟県十日町市の「越後妻有里山現代美術館MonET(モネ)」で4月、修学旅行中だった新潟市立中学3年の複数の生徒が展示作品2点を壊していたことがわかった。同月終わりに開幕した「越後妻有 大地の芸術祭」に出展予定だったが、1点は修復できず急きょ非公開とされた。実行委員の十日町市側から被害届を受け、県警が器物損壊容疑で捜査を進めている。
(「修学旅行中の中学生が美術館の作品壊す 1つは修復不可、警察が捜査」朝日デジタル 6月7日 https://digital.asahi.com/articles/ASQ667S4GQ66UOHB00F.html)
まず、このような状況に僕が平気でいられるのは、多くの人が作品を愛してくれている ことを知ったからです。支えてくれている皆さんに感謝しています。彼のこのコメントに、最も心を打たれたのは言うまでもなくこの問題を躍起になって批判していた大人たちだろう。特に(副業でだが)教育者をやっている自分にとっては、脳天を撃ち抜かれるようなものだった。彼らがそのような行動に至ってしまった環境因子を、私たち大人がつくってしまってはいないだろうか。そうやって彼らの行動を批判し、私たち大人が子ども達を”管理”することを正当化してはいないだろうか。私たち大人が、特に教育者が(いくら金儲けでやっているとはいえども)、彼らを取り巻く状況を把握しようとしたり、彼らがこれからの将来をどうやって幸せに過ごしていけるようエンパワメントすればよいか考えようとしたりする視座を失ってはいけないだろう。
暗い展示室で何が起こったのか、どうして生徒たちがこんなことをするようになったのか、自分はまだすべてを理解しているわけではありません。まだ中学生ですから、これからの発言や対応には注意深くありたいと思っています。考えてみれば、誰でも若いうちはちょっとした失敗をするもので、今回結果だけ見れば一線を越えていたかもしれませんが、それでも誰かに怪我を負わせたわけではありません。確かに作品は完全に破壊されましたが、物は物です。幸いこの作品に使われている素材は(その多くは現地の方に譲っていただいた織り機です)どれも修理や再生が可能なようです。しかも、作者はまだ生きていて作品を修復する気力も体力もあります。だから、物理的な面ではそれほど深刻な状況ではありません。
それよりも重要なのは、生徒たちが内なる不満や怒りや欲望をさまざまな違った形で表現できるように支えることです。これはアーティストの力ではどうにもならない。大人や学校、友だちや地域の人たちの協力が必要です。少なくとも自分は、修復を通じて、この事件が彼らや彼らのコミュニティ、そして芸術を愛する人々に悪い爪痕を残さない よう、最善を尽くしたいと思います。良い夏休みを迎えましょう!
新潟県十日町市の「越後妻有里山現在美術館MonET」を訪れた修学旅行中の中学生が芸術作品2点を破損したと報じられ、物議を醸している。このうち1点は修復ができない状態だと伝えられている。美術館側は警察に被害届を提出し、捜査が行われている。 美術館や博物館などの文化施設は学生が団体客として多く訪れる場所だ。今後は引率者の監督責任なども問われそうだ。何より美術作品の破損トラブルはかねてより起きてきた。 今に始まったことではないケースとしては、1960年に起こった弥勒菩薩の指折り事件が挙げられるだろう。京都の広隆寺に展示されていた弥勒菩薩の右手薬指の第2関節から先が無くなり警察が捜査中に、京都大学法学部3回生だった20歳の学生が指先の破片を持って現れた。学生は像にキスをしようとしたところ、学生の顔が指先に触れ折れてしまったという。弥勒菩薩は国宝の第一号であったため、このニュースは海外でも報じられ話題となった。折れた指先の素材は失われなかったため、修復は行われている。大学生が出品した美術作品が、死亡事故につながってしまったケースもある。2016年11月6日、明治神宮外苑で行われていたデザイン系のアートイベント「TOKYO DESIGN WEEK」の会場で、大学生グループが美術作品として展示していたジャングルジムが炎上する火災事故が発生。光として当てていた投光器の白熱電球の熱により木くずから発火したと見られる。この事故で5歳の男の子が亡くなってしまった。主催者が事故後も展示を続けた点や、忘年会開催を計画していたことも問題となった。この事件では学生2人が重過失致死罪で起訴され、一審判決では執行猶予付きの有罪判決が下される。学生側は無罪を主張していたため控訴し、裁判は継続中だ。2018年9月には、兵庫県神戸市の六甲山で行われていた「六甲ミーツ・アート芸術散歩2018」で笠井祐輔氏の作品が破壊される事件が発生。施錠された会場内に何者かが侵入して破壊が行われた悪質なものだ。作品は約1か月間をかけ修復され再展示がなされた。さらに夜間は作品を撤去し屋内に保管、防犯カメラ設置などの対策も取られた。 とはいっても、美術作品は必ずしも修復が可能なものばかりとは限らない。やはり、破損は絶対にあってはならない重大な問題だと言えるだろう。
(「過去にも起こっていた美術品破損、学生による国宝破壊や作品による死亡事故も」exciteニュース 6月11日 https://www.excite.co.jp/news/article/Real_Live_200217605/)
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